TOP WING Sonic Corrector・RECOVER機能の補足説明

トップウイング菅沼です。TOP WING Sonic CorrectorのRECOVER機能について、多くの反響とともに、鋭いご指摘も数多く頂戴しました。本記事では位相回転による海苔波形音源の復元というアプローチをより正確にご理解いただくため、いくつか踏み込んだ補足説明をさせていただきます。
・デコンプ・エクスパンダーの類ではないのか
異なります。過度なリミッティング・マキシマイズが施された音源(以降海苔波形音源と呼びます)ではピークが一定の値に張り付くため、スレッショルドを定めることができません。また、Sonic Correctorは純然たるアナログフィルターで構成されており、ソース機器の規定出力電圧が様々な現状を考えると、特定の入力電圧値をスレッショルドとすることができません。
・例示されている音源は、海苔波形音源の中でも過度な処理を施された特殊な事例ではないのか
一般的な海苔波形音源を選びました。菅沼のライブラリの中にはさらに過度な処理を施された音源があります。例えば、それら音源では、RECOVERは以下のような働きをします。




なお、楽曲名等については、音源の処理へ決定権を持たない関係者への影響を避けるために公開はしません。
・海苔波形音源以外の音源にRECOVERをかけるとどうなるのか
基本的に変化はしません。ただし、海苔波形音源以外であっても適切なリミッティング・マキシマイズが行われるのが普通なので、その場合には、その処理で失われたピークが一部表出します。例えば以下のような変化があります。




また、すべての機能をオフにしても入出力バッファー回路を信号が通ることになるので、回路には工夫を凝らしていますが情報量の欠落が発生しないとは言えません。もし気になる場合には、REC/PLAYの機能のついたプリ・プリメインアンプをお持ちでしたら、外部エフェクター的にお使いいただくことをお勧めします。
・dbx discやadres discなどのダイナミックレンジ伸長の一種か
異なります。dbx discやadres discのデコーダーは、当時レコードというスルーレートに制限があったメディアだからこそ、平均音量の検出などの手法で効果的にダイナミックレンジ伸長が可能でしたが、それでもブリージングの問題がありました。デジタルになって実質的なスルーレートがサンプリングレートというとても高い値になると、急なブレイクなどで音量制御が不安定になってしまいます。また、ハイレゾ音源では超高周波にノイズが重畳しているケースも多く、Sonic Correctorでは別に搭載したANTI-ALIASが必須になります。MPXフィルターがdbxやadresなどで必要だったのと似ています。
簡単に言えば、海苔波形音源は、すべてが海苔波形で構成されているわけではなく、ダイナミックレンジ伸長は、海苔波形ではないところに悪影響が出てしまうということになります。そこで振幅や帯域バランスは変えず、位相回転を行うことによって元々のピークを表出させるようにしたのが、Sonic CorrectorのRECOVER機能です。
・波形の位相を変えるだけで、ピークが表出するのはおかしくないか
直感的に理解が難しいと思います。例えば、同一周波数で振幅1のサイン波を複数重ね合わせた時のピークを考えてみます。2つの場合は容易です。最小値は0(逆相)、最大値は2(同相)となります。
では、3つの場合はどうでしょうか。最大値は3と容易に想像できますが、最小値は1(2つが同相、1つが逆相)でしょうか。いえ、それぞれ120度ずつ位相が異なると、最小値は0になります。
同様にして、N本のサイン波を重ね合わせた時の最大値はN、最小値は0(それぞれ360/Nずつ位相が異なる)となります。

同一周波数だと一意に求まるので、周波数が異なる場合も考えてみましょう。sin(x)+sin(2*x-Φ2)+sin(3*x-Φ3)...(n*x-Φn)の時、つまり基本周波数に対して倍音で構成されるときの最大値と最小値ですね。2の場合だと…?いきなり難しくなるので総当たり的にプログラムで探索してみます。

最大値が2になるのは想像できます。3つになるとどうでしょう。

最大値はnになるようです。最小値はそこまで上がりません。一気に6まで見てみます。



最大値は6になっても最小値は2.5程度とかなり分散できることが分かります。しかし波形の概形は大きく異なってくることも分かります。位相回転によってピークが表出するのが分かると思います。
これを利用したのが動画等で言及している位相回転によるFM放送の送出パワー低減、またSonic CorrectorのRECOVER機能でもあります。もちろん、上記の例のような極端な位相操作は音質変化を伴うため、あくまで海苔波形音源のピークが表出した効果のみを享受できるように、RECOVERでは音響心理学の側面から聴感上の違和感が生じない範囲で位相を回転させています。具体的に言うと、振幅の変化に比べて、極めて位相変化に鈍感、特に高域に比べて低域の位相回転に鈍感であることを利用して、位相変化自体では音質変化を感じないものの結果としての振幅による変化を感じるような仕組みです。
ここまでで、RECOVER機能が何をしていないか、何をしているかはおおよそご理解いただけたかと思います。
・ここまでピークが表出すると出力電圧が増大することにならないか
その通りです。菅沼のライブラリで最も過度な処理をされた音源を確認すると、前後で6dBほど出力電圧が増大します。そのため、一般的なソース機器のRCA=2Vrms、XLR=4Vrmsに対して、Sonic Correctorの最大出力電圧はRCA=4.1Vrms, XLR=8.2Vrmsまで確保しています。また、RCA入力時には標準でゲイン-6dBとなっており、一般的なソース機器を接続した場合に、最大でRCA=2Vrmsの出力となるようになっています。もし、最大入力電圧が高いプリアンプ・プリメインアンプをお使いの場合には、付属のショートピンをXLR入力端子に挿してお使いください。また、ショートピンを使わない場合であってもプリ・プリメインアンプの最大入力電圧を越えてしまう、音が歪んで聴こえてしまう場合には、ソース機器側のボリュームを下げてお使いください。
加えて、オペアンプを定格最大電圧で駆動していますので、電源オンの状態で入出力のケーブルを繋ぎ変えることは避けてください。Sonic Correctorが壊れる可能性があります。
・位相回転によるピーク表出は復元といっていいのか
判断が分かれるところですが、以下から復元と表現しています。
・元の音源の位相情報のみを変えてピークを表出していること=音源によって効果が異なり、Sonic Corrector特有の効果ではないこと
・ダイナミックレンジ伸長、ピークの推定などによる波形の再形成は行っていないこと
・位相回転自体は音源処理として一般に行われていること
・「波形の概形」が矩形(エンベロープが矩形)なことと、波形そのものが矩形であることがゴチャゴチャになっている。まったく意味が通らない。
エンベロープ(マクロ)と波形(ミクロ)は、概念としては区別されますが、一般的な海苔波形音源においては不可分です。製品説明において両者を混同しているのではなくリミッティングやマキシマイザという振幅・位相操作によって作られたマクロな海苔状態を、位相操作によってミクロから解き放つという一貫したプロセスを説明しています。
そもそも海苔波形音源が、なぜピークが一定値に張り付いているのか。それは、マクロな音量を稼ぐために、ミクロな各周波数成分の位相が、0dBFS、あるいは各プラットフォームの規定値を超えないよう、整理・抑制されてしまっているからです。
Sonic CorrectorのRECOVER機能は、この不自然に整理・抑制されてしまった位相を、全帯域にわたって再配置します。
ミクロな視点では、平坦化された個々の波形のピークが、位相回転によって本来の鋭さを取り戻します。マクロな視点では、それらが積み重なった結果として、海苔波形音源全体のピーク構造が表出します。
例外として、音源表現として矩形波そのものを用いている場合、例えば(コナミ)矩形波倶楽部などのチップチューンでは、RECOVER機能によって想定外の音質変化が生じる可能性があります。そのような音源を再生する場合には、RECOVER機能をオフにしてお使いください。
・本機はアナログ入出力だがデジタル入出力版などを作る予定はないのか
ないです。そもそも本製品の発想は独自のものではなく、既存の位相回転という手法を海苔波形音源の復元に特化したものであり、トップウイングとしてはこの効果を誰でも手軽に楽しんでいただけることを目的としています。Sonic Correctorは、リバースエンジニアリングに対するプロテクションを搭載しておりませんから、基板から定数を拾えばデジタルフィルター化して、RoonのConvolution機能等々に利用することもできるでしょう。そこまでできなくても、適当なオーディオインターフェースやAD/DAコンバーターなどで本機のIRデータを取れば模倣できます。別に購入者がそうすることは止めやしませんし、実際自分が一ユーザーであればそれをやるでしょうが、まあそれを再頒布する行為はトップウイングの本意に反するということだけは表明しておきます。また、過去には他製品でデモ機貸し出しサービスを利用し、測定は客観的評価であるという題目で自身のコンテンツ化した例がありましたが、測定方法は主観的選択です。購入した後ならまだしもデモ機貸し出しサービスはその目的で行っておりません。トップウイングのここ1年の活動はみなさまの善意と応援で成り立っておりますので、ご理解いただけますと幸いです。
・納期について
情報公開当初より大きな反響をお寄せいただいていること大変感謝するとともに、生産数が確保できず申し訳なく思っております。この記事の公開時点で、既に初回ロット(発売日発送)完売、第2ロット(2月下旬~3月上旬発送)は販売店によって極僅か、ほとんどの場合で第3次ロット(3月下旬~4月上旬発送)の受付となっております。加えて、第3次ロットについてはパーツ確保が完了しておらず、生産数が未定の状況です。恐れ入りますが、お早目のご注文をお願いする次第です。また、状況によってはデモ機確保もままならない可能性がありますので、デモ機貸し出しサービスの開始を延期する場合もあります。弊社トップウイングの努力不足ではありますが、何卒ご理解いただけますと幸いです。














